私が、初めて確定申告をしたのは、一九九九年に大阪大学を辞めて、たまたまその年に本が売れて多量の文筆収入があったので、その翌年のことである。私は元来、経済というのが苦手で、今でも、経済学というのが役に立つのかどうか疑問に思っている。経済学者のかくかくの説がかくかくの効用を示したというような話を、聞いたことがないのである。資産もないサラリーマンの家に育ったから、まったく気にせずに生きて来たのである。ただし、カナダ留学中は、奨学金に課税されたので、この時は申告している。しかし間違いだらけだったようで、あちらで徹底的に直された。 その頃は三鷹に住んでいたから、三年間は武蔵野税務署で、最初の二年は持参して、これでいいのか税務署員に確かめてもらって出した。ところが最初の年は、必要経費を引くということを知らなかったため、収入に丸ごと課税されて、大変な思いをして、翌年からは領収書を取っておいて必要経費を引