その日、俺は疲れていた。会社のサービス残業、人が仕事をしているのに時間つぶしで雑談をするおっさん達。口から出てくるのは、酒、ギャンブル、女だ。早くこの世界から抜け出したい。 家に帰り、自分を待ってくれていた妻に、告白をする。今思えば、疲れていたのかも知れない。 「ブログで、PVで飯を食っていくよ。」 人気ブログとはいえないが、月に1万PVくらいはあった。自信と手ごたえがあった。 「は?ミュージシャン?」 妻は、とぼけた声でそう聞き返した。説明が悪かったのかも知れない。ブログで、つまりマネタイズされたPVで金を稼ぐというのは、あまり一般的なモノじゃあないだろう。もう1度言う。 「ブログで、飯を食って行きたいと思うんだ。」 「何?ミュージシャンになるの?」 「いや、そうじゃなくて、ブログからPVを出して、それで…。」 「何?ニコニコ動画とかで歌い手ってのをやるってこと?」 「いや、そうじゃなく