この書店には、人々を旅に誘(いざな)う本が並べられている。退屈な代わり映えのしない毎日に疲れたら、ここに来て、どれでも好きな本を手繰ってみたらいい。異国、辺境、過去、未来。行き先はあなた次第だ。 だけど、実際に旅をすることまではお勧めしない。 旅慣れていない人が、いきなり旅をしようとすると大変だ。たとえば「ローカル線で行く列車の旅」。そう聞くと素敵だけど、ローカル線の旅は退屈である。似たような景色が延々と続くし、特に地元住民との触れあいなんてない。あっても会話は続かない。列車の旅は、5分間番組で楽しむからいいのである。 想像力のない人間が旅に出ても得られるものは少ない。僕がまさにそうだ。せっかく世界遺産や遺跡を訪れても、感動ができない。ノルウェーのブリッゲンは「ただの小さな家」。日本の自然遺産も「ただの岩山」や「ただの森」なんて思ってしまう。十分に旅を堪能するには、背景となる知識を身につけ