リザヴェータにとってカチェリーナという少女を描くのはライフワークである。そのように決意したおぼえもないのだが、ごく当たり前のようにカチェリーナを描き続けていた。手先がやたらと器用で、あらゆる芸術的な分野で天才性を発揮していたリザヴェータだったが、カチェリーナ以外の絵を描くのは余芸であった。いくらカチェリーナの絵を描いても、本人をデッサンしているわけではないので、それを世間に発表はしなかったが、あくまでそれが活動の中心だったのである。 天才的な社交性を持つ妹のグルーシェンカがカチェリーナと交流を持ち、自宅に居候させるまでになった時は狂喜したが、自分の天才的な画力でカチェリーナの下手くそな絵をdisる役割をさせられた。カチェリーナは知力がとても高い少女であり、天才と名高い妹のグルーシェンカでさえ、カチェリーナの方が知能が高いと認めていたから、明らかに下手くそな絵の道を断念させるのは親切心に他な