「BOACスチュワーデス殺人事件」と聞いても、知らない人が多いだろう。1959年に発生し、重要参考人であるベルギー人神父が取調べの最中に突如帰国してしまったことで迷宮入りした事件だ。 本書『消えた神父、その後』は、事件から55年後、当時カナダ在住であった神父を追跡し、ついに面会を果たし、『消えた神父を追え!』(共栄書房)を上梓した著者が、神父の死をきっかけに、再び事件の真相に迫った本である。 「昭和の二大未解決事件」の1つ 松本清張『黒い福音』のモデルとなり、三億円事件と並んで「昭和の二大未解決事件」とされた事件なので、高齢者の仲間入りした評者にとっても、興味がそそられる事件だった。だが、前著の存在を知らず、最近まで神父が生きていたことも、どのような人物だったかも知らなかった。 通読して感じたのは、「昭和は遠くなりにけり」ということと、ある種の「無惨さ」である。 本書では、被害者で当時、B