ひとりの人間のことをかんがえるとき、いつも数おくページある巨大な1冊の本を思いうかべる。本ごと本ごと、中にかいてあることはさまざまだ。文字だったり数字だったり図だったり、そのどれとも呼べないようなものもある。だけどどの1冊も、数おくページあるのは同じだ。そうおもう。 本の中身をさらして歩いている人はそういない。みんな表紙と背表紙と、そしてときどき裏表紙をみせるくらいだ。表紙にわかりやすいタイトルがついている人なんかは、「わかりやすいやつだ」なんて言われたりする。けれど秘めたページの中身には、タイトルとまるでちぐはぐな、関係のない文字列がひたすらに並んでいたりする。そのことに、本人も気づいていないこともある。 人と人のほとんどは、そうやって表紙だけの付きあいをしている。でもときどき人は、表紙をめくって本文を、他人にみせることがある。それは、年月のちからかもしれないし、「もっと知ってほしい」と