米中貿易交渉は、4月まで交渉を積み重ねてきた合意文書案を、5月初め中国がいきなり大幅に削除修正したことで暗転した。トランプ大統領は即座に昨年末から留保していた関税引き上げを決定、中国もこれに対抗する措置を発表して、貿易戦争が再燃した。 4月初めには「5月にも妥結か」と楽観的な見通しが専らだったのに、中国が突然これまでの柔軟な交渉態度を翻したのは何故か。 昨年秋に急減速した景気が財政大盤振る舞いのおかげでやや持ち直したので、中国に強気が戻ってきたこともあるだろう。 米側の要求が次々に引き上げられ、一部の要求が「中国が昔、苦しめられた不平等条約を思い起こさせた」(中国識者の表現)こともある。「国家の尊厳や原則に関わる論点」となると、中国人は強く反応する……お馴染みの光景だ。 しかし、「態度急変」の最大の原因は、米国が安全保障リスクを理由に、ファーウェイなど中国企業をボイコットする政策を一層エス