彼女と出会ったのはもう十年前。 僕が駆け出しの技術者と幽霊大学生とプータローをかけもちしていた頃。 恵比寿の名も無い公園のブランコに揺られながら、何人かの仲間でぼうっとただ夜が空けるのをまっていた頃。 「清水さんは将来なにがしたいんですか?」 と聞かれて 「人類を補完したい」 と言ったような頃。 「真面目に答えてください」 と言った彼女の笑顔はとても素敵だった。 「真面目さ。科学技術とネットワークの発展は、人類の進化そのものだ。最先端の世界で科学技術を操り、技術で革命を起こしていくことは人類の足りない部分を補完しているとも言える。人に翼はないが、飛行機によって補完されるのと同じだよ」 僕はエヴァンゲリオンとおなじくらい彼女が好きだったけれど、そのとき僕は別のことに夢中で、いつのまにか彼女は結婚してしまった。 好きにもいろいろある。 カレーが好き、お父さんが好き、ガチャピンが好き、コン