データからイノベーションを生み出すことができるだろうか。標準的な統計手法を使ってデータを解析し,消費者の特定の行動が他のどんな要因と相関するかを調べることで,新しい画期的な製品やサービスのアイデアを創出できるだろうか。消費者があげる満足要因を充足し,不満足要因を除去することで,魅力的なデザインを生み出すことができるだろうか。常識的にいえば,それは非常に難しい。イノベーションとはこれまで存在しなかったものを創り出すことだから,消費者の過去の行動をいくら分析しても,イノベーションのネタを見つけることは難しいと。 しかしながら,膨大なデータを読み込んで,素晴らしいアイデアを生み出す現場の達人がいる。そうした逸話でよく聞くのが,読み込みとひらめきの間に「寝かせる」プロセスがある,ということだ。この場合,データ処理を担うのは脳の無意識の部分である。最近,脳神経科学や認知科学の研究によって,無意識の力