手書きのユレについて 手書き文字には,かならず形状のユレが伴う。同一人が書いても,そのときの状況(たとえばゆったりした気分のとき,急いでいるとき,緊張しているとき,使い慣れた筆記具で書いているとき,不慣れな筆記具を使ったとき,などなど)で文字の形も変わってくる。書く人が違えば,その差も非常に大きいものになる。だからこそ「筆跡鑑定」が成立するのである。 手書き文字によるコミュニケーションというのは,そういうユレを前提とし,しかもその傾向が書き手と読み手でかなり異なっていても成立しなければならない。逆に言えば,さまざまな場でのコミュニケーションの経験を通じて,どこまでのユレなら理解されるのかを学んでいくということなのかもしれない。 文字には,それを特定する形状要素がかならずある。それが表現されていれば間違いなく相手に伝わるし,逆に特定される要素があいまいであれば間違って伝わる可能性がある。