「ポスト・トゥルース」の政治とは何か 政府見解に引きずられることのない事実を、我々の側で手放さずに守り抜くことが必要だ 五野井郁夫 高千穂大学経営学部教授(政治学・国際関係論) 「だれも真実を探求しようとせず、だれもが公平さや正確さをまったくないがしろにして、一定の『立場』を打ち出しており、誰の目にも明白な事実ですら、それを観たがらない人々からは無視されてしまうことがある」(ジョージ・オーウェル『私の好きなように』より) 2017年1月、アメリカに新たな大統領が誕生して以降、ポスト・トゥルース時代の政治が本格的に到来しつつあることに、少なからぬ数の人々が底知れぬ不安と恐れを抱いていることだろう。その不安と恐れは、正しい反応である。なぜなら、ポスト・トゥルースの政治の特徴とは、「ファクト」と「リアリティ」をコントロールすること、すなわち現実に起きた事実の真偽に関する支配にほかならないからだ。