作り話「カズ,お前に話さなければならない事がある」庭にある小さな池の前にしゃがみこみ,鯉を眺めている8歳のぼくにおじいちゃんは言った.おじいちゃんは自衛隊に所属していたころは戦場に出たことはないものの,その正確無比な射撃能力からデス・マシーンと呼ばれていたほどの人間だ.「すまん,やっぱりなんでもない」そのおじいちゃんが躊躇う様子にぼくは困惑したが,勇気を出して教えを乞うことにした.「なーにーおじいちゃん,教えてよ!」おじいちゃんはぼくから目を逸らし,自分の足元に目を遣った.そして目線をそのままに,蚊の羽音のような小さい声でこう呟いた.「じつは…おまえは母さんとおじいちゃんの子供なんだよ」よく聞き取れなかった.でも自分にとって恐ろしいことなんだと本能的に悟ったぼくは,それ以上聞くのをやめた. しばらくおじいちゃんに背を向けて,ぼくはじぶんの足を上ってくる蟻を眺めていた.こんなに元気のないおじ
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く