一九四〇年の十月、日本軍はフランス領インドシナの北部へ進駐した。現在のヴェトナム、カンボディア、そしてラオスなどの一帯だ。中国を支配しようとしていた日本は、この進駐によって東南アジアから中国へ物資が入るルートを絶とう、という目的を持っていた。アメリカやイギリスは、当然、日本のこの動きを警戒した。シベリアへ出ようか、それとも東南アジアにしようかと迷っていた日本は、東南アジアへ出ていくことを決定した。 一九四一年の七月、今度はフランス領インドシナの南部へ、日本軍は進駐した。フランス政府との協定にもとづいた進駐だったが、これ… 初出:『映画を書く──日本映画の謎を解く』ハローケイエンターテインメント 一九九六年 底本:『映画を書く──日本映画の原風景』文春文庫 二〇〇一年