スパイダーマン ファー・フロム・ホーム、等身大の16歳の悩みと「大いなる力」の葛藤が実にスパイダーマンらしいけど、一方で非常に恐ろしい映画でもある。なぜならこの映画は「フェイク」にまみれた現実を描いているから。 人は信じたいものを信じる。真実など求めていない。トランプ大統領の誕生前後に「フェイクニュース」や「ポストトゥルース」という言葉が盛んに使われるようになったが、「ファー・フロム・ホーム」では、トニー・スタークという「理想」亡き後の世界に、そんな混沌とした2019年のリアルを描いたのだ。 ミステリオは虚構の「敵」と戦う。ほんとうは誰とも戦っていない。けど、市民はミステリオが「戦う」姿に熱狂する。スタークが死に、アベンジャーズの創設メンバーは散り散りになった。誰が地球を守る?そんな不安渦巻くデジメーション後の世界に、ミステリオは現れた。ミステリオも、エレメンタルズも、フェイクである。彼は