そのむかし、聖天子の聞え高い帝堯のころの物語である。堯は位に即 いてからこのかたひたすら心を傾けて、天を敬い人を愛する政治をとり 行い、天下の人々から慕われた。太平無事の月日がつみかさなって、い つしか五十年がすぎた。あまりの平和さに、堯の心にはかえって一抹の 不安がきざす。 「いったい天下はいま本当にうまく治っているのだろうか? 人民たちは本当にわしを天子に戴くことを、 願っているのだろうか?」 堯はそのことを自分の目で視、耳で聴いて直接に確かめようと思い立 って、ある日のこと、目立たぬ衣服に身をやつし、こっそり町中にしの び出た。とある四辻に通りかかると一群の子供たちが手をつないで遊びながら、こんな唄を歌っている。 我が烝民を立つる、 爾の極にあらざるはなし。 識らず知らず、 帝の則に順う。 (天子さま 天子さま 私たちがこうやって 元気に楽しく暮すの
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