1980年に出た『新修宮沢賢治全集』(筑摩書房)の第十二巻には箱全面を覆う帯がついていた。毎月こつこつとこの全集を買っていた頃が個人的な第二次宮沢賢治ブームだった。この帯の裏表紙側には『銀河鉄道の夜』冒頭の原稿の写真が載っていて、賢治さんの手書きの文字に大いに興味をかき立てられた。 まずタイトルが『銀河鉃道の夜』と書かれている。戦前の出版物なら『銀河鐵道の夜』だし、戦後なら『銀河鉄道の夜』となる。俗字の「鉃」は活字にはならない。 原稿全体を見てみたいと思いながらも当時は術もなく、そのまま時がすぎた。 Twitterで、『宮沢賢治「銀河鉄道の夜」原稿のすべて』という本が存在することを知ったのは最近で、にわかに第三次マイブームに突入したわけだ。 影印を舐めるように見ながら、まずは賢治さんが変体仮名を書いていないか確かめた。以前芥川龍之介『河童』の原稿が公開されたとき、「か」や「な」が概ね変体仮
![宮沢賢治の手書き文字 - 楷書活字(新居)](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/b8e635394cee929aca2123dd0dcff8dd9988d118/height=288;version=1;width=512/http%3A%2F%2Fcdn-ak.f.st-hatena.com%2Fimages%2Ffotolife%2Fk%2Fkoikekaisho%2F20150712%2F20150712163901.jpg)