「都知事閣下と都民各位のために、もらっといてやる」−−先月の芥川賞決定記者会見の発言で、一躍時の人となった田中慎弥さん(39)=山口県下関市在住。受賞作「共喰(ともぐ)い」(集英社)の発行部数は、純文学としては異例の20万部に達した。すっかり毒舌のイメージが広まったが、素顔の本人は?【渡辺亮一】 【「もらっといてやる」発言の真意】芥川賞に選ばれて:言いたいこと、あの夜と今=田中慎弥 受賞決定から2週間後の1月31日夜。北九州市内で、田中さんを囲んで祝杯をあげる数人の集まりがあった。受賞会見に話題が及ぶと、田中さんは「葉室(麟)さんと円城(塔)さんに申し訳なくて……」。例の発言のためにメディア(特にテレビ)の関心が自分に集中し、ほかの芥川・直木賞受賞者の存在がかすんでしまったことをしきりに気にしていた。 文芸担当として07年ごろから接してきた記者の目に映る田中さんは、周囲にこびない、無