原武史の『滝山コミューン』は、刊行当時評判がよく、講談社ノンフィクション賞も受賞し、原としては三つ目の賞になった。呉智英さんも褒めていた。ただ書評などを見ても、私には興味が湧かなかった。このたび古本を購入して目を通し、やっぱり自分とは無縁だなと思いつつ、その「世界」のあまりの違いに愕然とした。 愕然としたのは、原が私と同い年で、その小学校時代のことを描いているのに、全然共感したり同時代性を感じたりすることがないからである。 「滝山コミューン」とは、原が住んでいた東久留米市の団地と、そこの第七小学校の呼び名で、政治の季節が終わった後も、なお日教組のような左翼組織に属するような教師たちの、学校運営と、それへの原の違和感が中心となっているが、妙に細かな事項も書いてあり、しかしそれもまた私の感じていたものとは違う。 原は東久留米を「郊外」と位置付けているが、私が卒業したのは越谷市立出羽小学校で、都