ゴダールが予告編の名手であることはよく知られている。ゴダールの手にかかると、予告編はそれが予告するところの本篇の粗末な要約であるどころか、それ自体として一つの短編としての完成度を備えるようになる。そのことは、作品のキーワード(かわいい女の子、悪党、拳銃…)をアンヌ・コレットの声が次々に列挙する一方で、それに対応したりしなかったりする映像がテンポよく展開されていく『勝手にしやがれ』の予告編(左)——それを締めくくるのは、ゴダール自身による「今やっている最良の映画」le meilleur film actuelという声だ——や、同じ手法をブラッシュ・アップした『軽蔑』と『気狂いピエロ』の予告編を見るだけでも明らかだ。あるいは、ブレッソンの『少女ムシェット』の予告編(右)など、一種の映画批評になっているとも言え、「予告編」の概念そのものを更新している。その他にも、ゴダールの声が非西洋音楽のメタフ