米国製カメラ装置の中国への不正輸出事件では、輸出が規制された精密機器を扱う自覚が国や企業に欠如している実態が浮かび上がる。海洋進出を図る中国や挑発を続ける北朝鮮などとの緊張が高まる中、日本が進めてきた米国との信頼関係の強化政策に水を差す事態ともなりかねない。 「カメラ装置が軍事転用可能だとは認識していない」。10月、国土交通省関係者は取材にそう答えた。国交省が装置転売の事実を把握したきっかけは、廃棄処理事業を委託していた三菱電機からの報告。装置が転売された経緯の調査も三菱電機に委ねていた。 同様の無責任さは民間企業にもみられる。三菱電機は装置の廃棄事業を下請けに委託。この下請けはさらに2次下請けに委託した。2次下請けは適切に廃棄処理したことを示す書類を偽造し、三菱電機や国交省側に提出する一方で、実際は別業者に転売していた。こうした各社の様子からは、軍事転用可能な精密機器を扱う自覚はうかがえ