2016年11月に公開された大ヒット映画『この世界の片隅に』。209万人を超える観客動員数もさることながら、今日まで1日も途切れることなく上映が続いている(※)という事実が、この作品の強い求心力を物語っている。第2次世界大戦前後の広島県・呉を舞台に淡々とつづられる人々の「普通の暮らし」が、なぜこれほどまでに心をつかむのか。終戦の日を前に、監督・片渕須直さんに本作を通して伝えたかった思いを聞いた。 ※2018年7月3日現在 日常の中にあるはかなさや、かけがえのなさをすくい上げたかった ――本作は、いわゆる「戦争映画」とは一線を画し、ごはんを食べたり家事をしたりという普通の人々の日々の営みが丁寧に描き込まれていることが高く評価されています。監督はなぜこのような表現法をとられたのですか? 片渕 生活を主軸にした、生活を描く映画を作ることが僕にはいつも目標でした。 アニメーションというのは空想的な