恐らくはあらゆる業界の専門家は、その専門性が高まるほどに、 外から見ると「いいかげん」に見られてしまうリスクを抱えてしまう。 専門家には、「本当の専門家」と、「専門家っぽい人」とがいて、 「っぽい」人の意見は、治療に何ら貢献しないのだけれど、たいていの場合、 手柄は全部、その人に持って行かれる。 循環器内科はラクテックを使う 大学の循環器内科では、初期輸液は例外なく「ラクテック」と決まっていた。 この輸液は本来、脱水のきつい人なんかに用いるもので、心臓が悪い患者さんには、 むしろ「良くない」輸液だと習う。 教科書には、心臓の悪い患者さんには「5% ブドウ糖水」を入れるようにと書いてある。 この輸液は、実質何も変えない代わり、心臓への負担が少ない。 心不全を合併した心筋梗塞の患者さんにラクテックを処方すると、 普通の病院だと、上の医師から怒られる。大学だと、逆にラクテックをつながないと怒られ