この世に生を賜って二十年、振り返ってみればお陰様でずいぶん健康に暮らしてきた。骨折したこともないし、体は弱いが病院のお世話になったことは人並み以下のはずである。入院経験もない。羅った病気といえば、中二病とコミュニケーション障害ぐらいである。しかしこれが大病であって未だに治る気配がない。もっとも、リハビリはしていない。 そういうわけで、人より友達の少ない生涯を過ごしている。その中でDという同級生は、潮風の吹く海辺の公立高校で出会った、僕の数少ない親友と呼べる人間である。高校一年生の頃から妙に古臭いネタがなぜだか通じ、溜まり場だった部室でスマブラをしたり、僕が部室を汚したり彼女イキリをしたら本気で叱咤し、大ポカをやらかせば力を貸し励ましてくれる、器用で正しい目を持った友人だった。本人の弁だったかは覚えてないが、「爪を隠したまま死ぬ能ある鷹」というのは正しい評だと思う。浪人中に寂しい思いをしたと