私がしようとしていることが悪いことだとは知っている。だが、怒りが私の計画を支配しているのだ。それは、人間にとって最悪の禍のみなもとなのだ。(エウリピデス『メディア』) これは子供を殺そうという計画に逡巡しながら、決意をみずからに言い聞かせるメディアの有名な独白である。彼女の行為をとおして哲学的に問題になるのが、一般的には「理性と感情の関係」と解されるものである。Annasによれば、古代哲学はこれを解こうとし、主にふたつの考えを提示した。ひとつは、ストア派的な理解で、メディアの行為を感情に支配された理性的行為とみなすものである。それは怒りによって統制されているために、誤ったものではあるのだが、理性的行為であることは揺るがない。というのも、彼女の「計画」は突発的な感情的行為ではなく、用意周到なものであるからだ。それに対し、プラトン的な理解によれば、これは理性と区別される情動(気概)が支配した行
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