「経営判断に必要な情報は全て現場にあると思っている。大学院でシステムをやっていたので、情報処理の重要性も分かるが、大本の現場を見ないと駄目だ」。6年前の2011年に東レの日覚昭広社長にインタビューした際、「経営判断に役立つ情報が見られるシステムが必要では」と私が問うと、日覚社長はこう答えた。 日覚社長は他の日本企業の経営者と同様に現場を重視する人で、現場を見ずに四半期決算などのデータだけを追うような経営を強く戒める発言が記憶に残っている。30年間も累積赤字を抱えながら炭素繊維事業を育てた、日本企業としての現場力と経営判断に対する強い自負もうかがわれた。 ところが最近、日本企業の現場がおかしい。神戸製鋼所のほか日産自動車、SUBARU、三菱マテリアルの子会社、そして東レの子会社で現場の従業員による不正行為が相次いで明らかになった。不法行為か契約違反か、あるいは件数の多寡などによって深刻度に差