「私は個人の自己決定権には反対しない。本当によく考えて決めたことだと確信が持てれば、私は妻の決断に反対しなかっただろう」 これは、昨年10月にスイス・バーゼルで自殺ほう助により亡くなったトリノ出身の学者マルタさん(55)の夫が、イタリアの新聞『ラ・レプッブリカ』の取材外部リンクに語った言葉だ。 10代の息子を長い闘病の末に亡くし、悲しみに暮れていたマルタさんは人生を終わらせたいと願っていた。だが家族の説得で、マルタさんは思いとどまった。家族は少なくともそう思っていた。彼女が家族に内緒でスイスに行ったと知るまでは。 数百キロメートル離れた英国でも最近、マルタさんとは別のケースが日曜紙メール・オン・サンデーで報じられた。47歳の化学教師アラステア・ハミルトンさんは、原因不明の健康問題に苦しんでいた。 ハミルトンさんは家族にパリの友人を訪ねるとだけ伝え、2022年8月、スイスの自殺ほう助団体ペガ