自己が他者との関係から生起するとすれば、その関係を具体的に担うものが何であるかによって関係の仕方が変わるわけですから、それは我々の実存に直接的な影響を与えるでしょう。とすれば、他者との具体的なコミュニケーションがどう行われるかは、特に重要な問題です。 もともと、原初のコミュニケーションは、声(鳴き声)とジェスチャー(指差しなどが典型)という、身体そのものが担っていました。このとき、何ものかが存在することのリアリティは、見る、聞く、触る、舐める、嗅ぐなどの身体感覚が直接保証していました。 ということは、コミュニケーションが可能な範囲は限られていて、基本的に小規模な地縁血縁共同体の内部か、広くてもその周辺の集団までということになるでしょう。 その後、言語が発生して、コミュニケーションの範囲と深度が拡大したとしても、発話器官が声帯しかない状況では、身体が中心的なメディアである事情に大きな変化はな