北関東を東西に横切る国道354号線沿線は、さまざまな国から移住してきた人たちによる「異国メシ」の本場だ。ここでの飾らない食体験から外国人労働者たちの日常を浮き彫りにする異色のルポ『北関東の異界 エスニック国道354号線 絶品メシとリアル日本』(室橋裕和著)を、ドライブインという昭和の残影にまつわる個人史を全国に訪ねた『ドライブイン探訪』の著者、橋本倫史氏が追体験した。 *** 春の陽気に誘われて、久しぶりに旅に出ようと思い立った。 北千住駅から東武鉄道の特急「りょうもう」に乗り、向かった先は北関東だ。太田駅で各駅停車に乗り換えると、日本語以外の会話が聴こえてきた。その会話を聴きながら、手元にある本を読み返す。 JR両毛線・東武伊勢崎線の伊勢崎駅の改札を出てきたのは、フィリピン人らしきおばちゃんたちだった。タガログ語でぺちゃくちゃとおしゃべりをしながら、駅頭に停まっているバスに乗り込んでいく