「エジプトの報道機関は国民をだましている」。青年は英語のプラカードを持ち海外メディアにアピールしていた。=2011年2月、カイロ 撮影:筆者= 「国営テレビは政府のコントロール下にある。民間の新聞も政府の圧力でウソばっかし書く」・・・ 日本のことではない。2011年2月、カイロのタハリール広場で公認会計士の青年(写真・当時33才)が、自国のメディア事情について語った言葉だ。 サッカー場が幾つも入るような広場は、ムバラク独裁政権打倒を掲げる人々で埋め尽くされていた。政治を私物化し国民には犠牲を強いる。ムバラク大統領に対する人々の怒りは臨界点に達していた。 「誰もエジプトのメディアを信じちゃいない」。青年は続けた。3日後、メディア支配のシンボルである国営放送にはデモが掛けられた。 独裁国家の国民は、新聞テレビが政治権力の広報機関であることを知り抜いている。 政権の意向に沿わぬテレビ局に所管大臣