佳純が成田空港まで一緒についてきてくれた。ゲートをくぐる直前に佳純は泣き出した。おれは黙って佳純を抱き寄せた。 "公共の場でこういうことはしたくないな。それに一月も経てば、違う男の子と仲良くなって、おれのことなんて忘れてしまうのに。いや、責めてるわけじゃないんだ。おれだって多分そうなんだから" そんなことを考えながらしばらく佳純を抱きしめて、おれはゲートをくぐった。佳純は泣きながらも顔をあげて手を振ってくれていた。おれも手を振ったが、金属探知機が鳴った。 おれはポケットを探った。右後ろのいつも空っぽにしているはずのポケットに手を入れると、ひんやりと冷たい感触がした。 おれはそれを手に取り、20代前半くらいのかわいい保安員の女の子に手渡した。 「これなんですか?」 「鼻毛カッターです」と真顔で答えた。 保安員の女の子は笑った。おれも笑いたかったが、ゲートの向こうで泣いている佳純を尻目に笑う訳