一見、覚えにくいタイトルだが、映画を観れば「自分は自分でひとりで生きていく」という前向きなメッセージの意味がスッと入ってくる。夫を亡くして、孤独に生きる老境の桃子さんの日常と若かりし頃の物語。東北弁をふんだんに使った若竹千佐子の同名小説を映画化したのは、『横道世之介』などで知られる沖田修一監督。これまでの作品同様、脚本も担当している。 沖田修一監督 「桃子さんの脳内に語りかけてくる心の声――原作で言うところの“柔毛突起”の映像化なんて不可能じゃないかと悩んでしまい、最初は諦めから入っていました。でも“柔毛突起”を『寂しさ』や『どうせ』というキャラクターにして、僕の好きな俳優さんが演じるという発想に行きついた時、書けると思ったんです」 “柔毛突起”を演じるのは濱田岳、青木崇高、宮藤官九郎という芸達者たち。桃子さんの周りで、時に楽しそうに踊り、時に寄り添う彼らの姿は、監督がイメージした通り、『