バスを待つ人形たち。綾野さんは、知人を思い浮かべて人形を作ることが多いという(撮影/写真部・岡田晃奈)この記事の写真をすべて見る 綾野さん。「人形の服にして、と全国から古着が送られてくるようになった」とか(撮影/写真部・岡田晃奈) 住民より人形が多く“住む”村がある。徳島市内から車で2時間半ほど。深い山あいにある三好市の名頃地区を訪れた。 【人形の谷 その他の写真はこちら】 いくつもの細いカーブを越えると、その村は現れる。平家落人の里として知られ、アレックス・カー氏の著書『美しき日本の残像』にも描かれた、東祖谷(ひがしいや)。 この辺りは限界集落が多いが、国道沿いに家が点在する名頃(なごろ)地区を歩くと、いくつもの人影がある。なんとなくにぎやかだ。しかし、みんな動かない……。 集落の人口は47人。24世帯が暮らすが、ほとんどが70~80代。一方、村のあちこちに置かれた人形の数はおよそ150