だいぶ年上の女性と雑談していて、厄年の体験談になったことがある。 彼女は大厄のとき、一軒の借家に住んでいたという。昭和の半ば過ぎの話だ。 小さな子供がいて、旦那さんは出張が多かった。そのときも家を空けていたそうだ。夜、彼女は子供を寝かしつけ、自分も布団に横になった。 ふと夜中に目が覚めると、おかしな気配がしたという。室内の暗がりに、何か影がいる。 彼女は驚いて声を上げた。 すると影は急に動いた。見知らぬ男となって彼女にのしかかってきた。隣で寝ている子供は、目を覚ます様子はない。旦那さんは今日は帰ってこない。恐怖と混乱で痺れそうになりながら、彼女は手足をばたつかせて必死で抵抗した。 しかし男の方が力が強い。徐々に疲労してもうこれまでかと観念しかけた彼女は、自分でも思ってもみなかった言葉を発したのだそうだ。 「ああ、神様‥‥!」 無宗教の彼女が、どうしてこのときこんなことを口走ったのか、今でも