昨年の大晦日は、紅白歌合戦を見なかった。 感想を求めるタイプの仕事の発生に備えて、一応、録画予約はしておいたのだが、その録画も未見のままだ。おそらく、この先も見ることはないだろう。 経験上、1週間以内に再生されなかった録画の99%は一生涯視聴されない。 というのも、録画予約は、録画した番組を視聴するための予備動作であるよりは、放送中の番組をリアルタイムで見ないことを自分に納得させるための手続きみたいなものだからだ。かくして、われら21世紀のテレビ視聴者は、配信されている映像作品を視聴することによってではなく、録画済みの未視聴番組をファイルとして蓄積することで満足感を得る、読まない蔵書家みたいなものに変貌している。この先10年もすれば、録画やファイリングという旧世代による指しゃぶり行動も廃れて、コモディティ化したオンデマンドの動画素材に対して、誰も飢餓と欲望を抱いていないウソみたいにクールな