小室さんが自分の表現を託したのは、女性の歌い手たちだった。「高い声、女性の声の方が届きやすいと本能的に、勝手に思っていたんです」。低い歌声は体格に左右されがちだが、高い歌声は練習すればものになる。「カラオケでも『私この曲、元のキーで歌えるよ』みたいな楽しみ方をしてもらえたらと思った」 バブル崩壊後の経済的な低迷も、女性の歌声に着目するきっかけだった。「男性はやらなければならないことに追われていたし、男の子の動きが目立たなくなっていった。女の子の方が服装も含めて自由で創意工夫があって、仕事や学校以外にも楽しめるすべを知っていた。そういう女性たちが、歌の題材としてすごく面白かったんです」 居場所が見つからない、分かってもらえない…。渋谷の街にたむろするような少女たちの思いをすくい取り、歌に昇華させる。華原朋美さんの「I’m proud」などはそうやって生み出された。 若い男性の文化が不良性と結