1940年(昭和15年)の東京が舞台である。 愛称で呼び合う仲睦まじい家族だった野上家は、お互いを「父べえ」「母べえ」「初べえ」「照べえ」と呼んでいた。しかし文学者である父べえ・野上滋が治安維持法で検挙され、平穏な家庭から一変してしまう。 当時は戦争に反対したり、お国を批判することは罪であり非国民のレッテルを張られ肩身の狭い生活を送ることになるのだ。 そんな中、母べえ・初べえ・照べえは不安を抱えつつ淡々と生きていくが、彼女たちには温かい思いやりを持った人々が次々に訪れ心配してくれるのである。 父べえの教え子で出版社に勤める山崎徹は、父べえとの面会申請のために奔走し、やがて一家から「山ちゃん」と呼ばれる大切な存在になる。そんな山崎徹は耳が悪いから軍隊に招集されることは無いと言っていたのだがとうとう赤紙を受け取ることになる。そして戦死してしまうのだが戦友に生き残ったら母べえに最期を話してほしい