幸運にも岩橋英行著『白浪に向いて/三宅清一を語る』(財団法人・安全交通試験研究センター発行)を借りることができた。今や手に入れようのない幻の名著である。著者は、三宅精一が点字ブロック発明のきっかけとなった友人である。私財を湯水のごとくなげうち、さらに赤字の連続。そうした中を歯を食いしばって点字ブロックを広めようと奮闘する様は、人としての生き方を学ぶ上でも格好の実話である。 一気に読み終え、何としてもこれを子ども向けの副読本にしたいという思いを強くした。できるならば、教科書に載せたい。早速、158ページにわたるその本を傍らに置き、B4二枚の読み物『点字誕生物語』に編集し直した。以下に紹介する。 ◆友人を襲った定め 昭和36年ごろ、三宅精一は、岡山市内で旅館業をいとなんでいた。 あれこれ工夫するのが好きで、精一の名は、街の発明家として知られるようになっていた。また、彼は生まれつき大の動物好きで