「エピテーゼ」という言葉を聞いたことがあるだろうか。事故や疾患・手術などによって欠損した部分に装着する人工の補綴(ほてつ)物のことだ。手足の機能・形を補う義肢と違って、エピテーゼは“見た目”をカバーすることが主目的で、その仕上がりはハリウッド映画の特殊メイクさながらだ。 歯科技工士として働きつつ、エピテーゼ製作や技術者養成スクールを運営するメディカルラボKの萩原圭子氏に話を聞く。 人間の皮膚のようにしっとりと柔らかな質感のエピテーゼ。シリコンの特性を生かした補綴物は指先の指紋や爪の質感、乳頭のしわまでも再現される。その緻密さは感動的でさえあるが、製作過程で最も集中力を必要とするのは彩色だという。 皮膚の色は均一ではない。太い血管の通る部分は青みがかり、毛細血管が密集した部分は赤みが強い。ところどころに黄色や白色が透けたり、茶色のシミが浮かんだりもしている。そんな皮膚の色調を細やかに再現する
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