フィリップ・ボール著 『ヒトラーと物理学者たち 科学が国家に仕えるとき』 2006年に出版されたオランダのジャーナリスト、サイベ・リスペンスの『オランダのアインシュタイン』は大きな騒動を引き起こした。一般的にはそれほど有名ではないとはいえ、1936年にノーベル賞を受賞し科学界にその名を残すオランダ出身のピーター・デバイについて、リスペンスは「ナチと共謀していた」と告発したのだった。デバイはドイツでカイザー・ヴィルヘルム研究所で所長を務めていたが、ドイツ国籍を取ることは拒否し、39年にはアメリカに渡っている。そんなデバイが、ナチ党員でこそなかったものの実は「ナチ体制の熱心な支持者」であったという内容であり、「戦時中はアメリカに留まりながらもナチ当局と接触を続けており、それは戦争が終わったらひとまずベルリンに戻る可能性を残していたのではないか」とリスペンスは見た。 デバイの名前と関わりの深か