防衛費を国内総生産(GDP)比2%にまで引き上げる議論がある。しかし、「防衛費を2倍にすれば、抑止力も2倍になる」というような、そんな簡単なものではない。 米国は喜ぶが 米国は日本に、北大西洋条約機構(NATO)並みに防衛費を引き上げるよう求めている。その要求に応じる国際政治の局面はある。米国を喜ばせる点ではたしかに意味がある。 しかし現実問題として防衛費を増やしたらどうなるか。日本の防衛費は4割強が人件費だ。その7割を占める陸上兵力を増強して、人件費を増やすことは実際的ではない。つまり防衛費を増やすことは装備費を増やす問題になる。2022年度予算では防衛関係費は5兆4000億円だ。2倍にするならば10兆8000億円だ。 装備をそこまで増やす現実的な方法はない。米国の軍事産業を喜ばせるかもしれないが、装備をそれだけ買うことは実際上、不可能だ。みな非常に単純に考えているが、防衛力というのは簡