2017年6月、慌ただしい出発の日を、ウィシュマ・サンダマリさんの妹、次女のワヨミさんは振り返る。「姉は中々荷物がまとまらず、“これ貸して”、“これも持っていかせて”と、私たちのTシャツやワンピースまでトランクに詰め込んでいました」。一家総出で空港に見送りに行き、涙が止まらない母を気づかいながら、ウィシュマさんは手をふり、ゲートの向こうに姿を消していった。その時の様子を、ワヨミさんは今でもありありと思いだすという。腰の高さまである紺色のスーツケースと、ワヨミさんが贈ったアニメ柄のハンドバッグには、いっぱいの荷物と共に、新しい生活への期待が詰まっていたはずだ。その4年後、亡くなった姉のスーツケースを引き取りに、自身も日本に渡航することになるとは、この時の妹たちにはまだ、予想もできなかっただろう。