文・絵 中山 晃子(@akikonkym) 「外科手術ですね。紹介状を書くので病院に行ってください」 そう言われて、頭を抱えた。1年も先延ばしにしていた、左右の親知らずの抜歯だ。 言い訳をするならば、旅公演の多い芸術家業。筆を洗い、絵の具を補充し、スーツケースのタイヤを直し、自身のメンテナンスは最後になりがちだ。しかし、海外での4ヶ月にわたるプロジェクトを終え、久々の帰国。いよいよ親知らずから目を背けられない。 「1週間顔が腫れるよ」「ハンマーで歯を割られるのは衝撃だった」「地獄」「でもだいたいみんな通る道だから頑張れ」などと友人たちに言われつつ、憂鬱を極めて大病院へ。 「個室と大部屋と、どちらがいいですか?」 歯を抜くくらいで大げさな(笑)と思ったが、入院することとなった。 待合室には、子犬やらチューリップやらが退屈に描かれた病院アートが連なり、予想外にそれに癒される私がいた。 色あせた