2020年9月某日 ここではないどこかへという気持ちが、日増しに輪郭を色濃くしている。どこかというのがどこなのか、そもそも「どこ」とは「場所」なのかもわからず、酸素を補給する場所を求めて、都内の気になる展覧会をめぐり続けている。 * 止まったら死んでしまう回遊魚のように動き続けるのは、常に変化が求められる「都市の時間」を生きているからだ。 止まったら死ぬ。 変化できなければ死ぬ。 後退しても死ぬ。死ぬ。死ぬ。死ぬ。 都市の時間は「直線の時間」とも言い換えられる。直線の時間は直線であるがために、常に変化を求められた先にある「死」は切り立った崖の先にある。 しかし、私たちが年を重ねて老いていく過程では、私たちは絶対に「後退」する。自分の人生を自分で切り拓いていく強さは眩しいが、思い通りにならなくなった人生を、自分を、老いや死を、肯定できない生に耐えることなどできるだろうか。 * ここではないど