2020年11月某日 好きな人を殺して食べたい。 そんな欲望を胸に秘めて生きてきた。 どうしてそう思うのかと聞かれても、わからない。 怖がられたり気味悪がられたりすることは承知している。 しかし、芥川龍之介とて、後に妻となる女性にあてて、「ボクは文ちゃんがお菓子なら頭から食べてしまひたい位可愛い気がします」と書いていたではないか。あるいは、折口信夫の唯一の女弟子である穂積生萩が、折口の死後に骨を食べたエピソードも『執深くあれ』(小学館)に記されている。 殺して、という響きがグロテスクさを帯びたとしても、好きな人を食べる(すなわち殺すことにもなる)という行為自体にはどこか甘美さが漂っている気がしてやまない。 * 恋の予感も、いつも「おいしそう」から始まってきた。 食べたい、触れたい、交わりたい。 欲を言うなら、境界を溶かしてひとつになりたい。 そんな話をすると、きまって「好きな人を食べたらい