本稿の目的は,日本図書館史に関する研究の文献調査を行い,その整理・検討を通じて今日の研究動向を明らかにすることにある。研究への着目の柱として,(1) 図書館史研究の方法論的な問い直し,(2) 日本の戦後図書館史の位置づけ,(3) 人物への注目という3つの観点を中心に述べる。日本図書館史研究では,批判的な歴史認識が問い直され,人物研究をはじめとして,インタビューや一次文書の探求・活用が求められる時期を迎えている。
公立図書館における書籍の貸出が 売上に与える影響について 【要旨】 我が国の著作権制度上、公立図書館において、非営利・無料で書籍類の貸出は、権利制 限規定により著作権者の許可なくして行うことができる。しかし、図書館における書籍の 貸出は売上を減少させるものであるとして、一部の諸外国において制度化されている、図 書館が貸出を行う代わりに著作権者に報酬請求権を認める、いわゆる「公共貸与権」の導 入を求める要望が著作権者側から挙がり、1990 年代末から同制度の導入の是非を巡り議論 が交わされたが、統計的な分析にまで議論が及んだものはなかった。 本論文は、計量経済学に基づく統計的分析手法を用いて、図書館における書籍の貸出が 書籍の売上に与える影響を明らかにすることを目的とする。分析の結果、むしろ図書館に おける書籍の貸出によって、売上が総計としては増加していることが分かり、貸出が売上 を減少させ
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