インフォメーションあってインテリジェンスなし 小谷賢『日本軍のインテリジェンス』講談社 第二次大戦で、日本軍の暗号の大部分が米軍に解読されていたことはよく知られている。これをもって「日本軍は情報戦に完敗した」とするのが通例だが、日本軍の暗号解読能力については、あまり知られていない。実際には、日本軍の情報部門の暗号解読能力も高く、米軍のもっとも高度な「ストリップ暗号」まで解読していた、と本書はいう。問題は、こうして収集された情報がほとんど戦略決定に生かされなかったことにある。 ここで重要なのは、インフォメーション(データ)とインテリジェンス(情報)の区別だ。前者は、敵がどこで何をしたという類の事実の集積で、それ自体には価値はない。軍事的に重要なのは、作戦上の要請に応じてインフォメーションを分析し、情勢を判断するインテリジェンスである。 インテリジェンスの地位は欧米では高く、エリートの職業とさ