『サクリファイス』近藤史恵著(新潮社) 『自転車少年記』竹内 真著(新潮社) 『それでも自転車に乗り続ける7つの理由』疋田 智著(朝日新聞社) 昨年、地味ながらも口コミで読者を広げ、ベストセラーとなった小説『サクリファイス』。ロードレースを舞台とした“自転車ミステリー”と言うべき作品だ。 元来ツール・ド・フランスをはじめとする自転車のロードレースというのは、1人のエースを優勝させるために8人のアシスト選手が自己犠牲の限りを尽くすという過酷な構図を持っているのだが、本書はその犠牲(サクリファイス)の意味を、全体を貫くテーマとし、ラストに圧倒的な感動を生むことに成功している。大藪春彦賞受賞作。 実は“自転車ミステリー”とも言うべきジャンルの本は『銀輪の覇者』(斎藤純著)、『男たちは北へ』(風間一輝著)などと、なぜか傑作が多い。孤独にペダルを踏む姿とハードボイルドには親和性があるということなのだ