舞台の上の華やかなバレリーナたち。多くの人に親しまれている印象派の画家、エドガー・ドガの《舞台稽古》である。舞台右側の少女たちは、本番を直前に控えて緊張する舞台稽古の最中である。指先まで神経が行き届いた優美な動きを見せている。一方で、舞台左側の少女たちは、欠伸をしたり、かがんでトウ・シューズを直したりと休憩中の無防備な表情を見せる。 しかし彼女たちが目指すのは、必ずしもバレエで成功することではない。19世紀後半のフランスにおけるバレエ産業は斜陽の傾向にあった。また彼女たちの多くは芸術としての舞踊を志しているのではなく、日々の生活費にも事欠く貧しさのなかで、パトロンを探す手段の一つとして舞台で踊る、といった側面も少なからずあったのである。
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