大量破壊兵器の被害に遭った日本に共感を寄せ「ヒロシマ通り」と名付けられた通りの看板=イラク北部ハラブジャで2019年11月、篠田航一撮影 中東に「クルド人」という人々がいる。国際ニュースに度々登場する民族なので、一度は耳にした人も多いだろう。その数は3000万人くらいと言われている。それだけで十分に一つの国を作ってもおかしくない規模だが、クルド人は国を持っておらず、イラクやシリア、トルコなどの山岳地帯に国境をまたいで住んでいる。 「山だけが友達だ」。クルドの人々にはそんなことわざも伝わる。確かに彼らの居住地を訪れると見事に山だらけだ。今回は、そんな山の中で取材した一つの物語を紹介したい。 中東の紛争現場を取材していると「大国は身勝手だなあ」と思うことがしばしばある。それが国際政治の現実と言われればそれまでだが、イラク北部クルド自治区で取材したこの話にはとりわけ嘆息してしまう。今回の時空旅行