松本隆は1985年の11月から12月にかけて、朝日新聞の夕刊で週1回『新友旧交』というコラムを8週にわたって書いていた。 そのときに「待ってくれた大滝」と題して、アルバム『A LONG VACATION(ア・ロング・バケイション)』が誕生した時の経緯を明かしている。 大滝詠一について語ろうとすると、もう十数年のつきあいになるのに、彼のことを何も知らないような気がしてくる。そういえば彼から家族のこととか、身の回りの雑事について聞いたことが無い。仕事以外のプライベートなことに関して口が重いのかもしれない。 一度だけ彼がぼくの家を訪ねてくれたことがある。 「今度作るアルバムは売れるものにしたいんだ。だから詩は松本に頼もうと思ってね」 「よろこんで協力させてもらうよ」 後にミリオン・セラーになった『ア・ロング・バケイション』は、こんな会話から生まれた。 (「待ってくれた大滝」朝日新聞1985年12